越智敦子 絵本と童話集 おはなし100こ

みよ子の赤いチューリップ8

しばらくして部屋に入ってきたお母さん、 「いったいどういうことかしら。ヨシミさんのチューリップが根元から折れてるの。みよ子は知らない?」
「知らない」
その声に一番びっくりしているのがみよ子でした。お母さんは続けて
「ねこでもふんでいったかしら」
「・・・いったかしら」
ねこさんごめん。

 

あの日の夕食は何だったかな。

 

 

あれから三十年という月日がたちました。実はあのあとすぐにお母さんとみよ子は東京に引っ越したのです。お母さんの友達が東京で美容室を開くので、お手伝いとして住み込むことになって。そして今ではみよ子も美容師さんとして働いています。東京に慣れるのは大変で、小さい時のあの町のことを思い出すことはあまりありませんでした。それでもお店でタオルをたたむたびに、白いタオルができあがっていく三角屋根の工場のことを、また、春に花屋さんにチューリップがならぶたびに、ヨシミさんの花壇のチーリップのことを、申し訳ない気持ちとともに思い出していたのでした。

ページトップへ