みよ子の赤いチューリップ12
ヨシミさんのベッドの先の小さな窓からあの花壇が少しだけ見えました。その雑草だらけの花壇にあの赤いチューリップを見つけたかのようにうれしそうなヨシミさんは、急に吹き出し始めました。笑いをこらえながら、
「ずーっと昔の話ですけどね。かわいい女の子がそこのはなれに住んでいたの。咲いたばかりのチューリップをいとおしそうに見つめながら、咲いた咲いたの歌やぶんぶんぶん蜂がとぶって歌いながら、ぐるぐる踊ってね。
とんだりはねたりひざまづいたり。
それはもう、かわいくってかわいくって。
だれにでもそんなときない? あるわよね。もう夢中で。そう、夢中で。夢の中にいられるときって。わたしはその瞬間をみせてもらったの。小さい人なりにたいへんな時を過ごしているのだろうなと、同情するような気持ちでいたのだけれど、あの夢中な時間をかげから見せてもらって、本当にうれしかった。忘れられないわ」

