越智敦子 絵本と童話集 おはなし100こ

じぞうさまのなみだ7

そう、猫。 兄妹同然にかわいがっていた猫を奉公につれていきたかったのですが、かなわぬことでした。どこからか女の子の帰りをまちわびて、にゃあとあまえた声をだしながら近づいてくるはずでしたが、その猫のすがたはどこにもなく、さみしくって家の前ですわりこんでしまったとき、そこに新しく住むことになった家の男の子がやってきて、猫は一年前に死んで裏には埋めたと教えてくれました。
裏にまわるともうこんもりともしていないけれど猫がうめられたあとがありました。
女の子はしばらく昔をなつかしむように埋められた土を両手でいじっておりましたが、夜になって家の人たちが帰ってきたので、立ち上がり、あの六地蔵のところまで無言で歩いてきたのでした。
 女の子には、もうねがいごとなどなかったのです。だけどどうでしょう。六地蔵を見上げて、自然に口をついてでてきたのは、やはりねがいごとでした。もうなにもかもなくしたきもちになって、このままおじぞうさまのあしもとで「ずっとのねむり」につきたいとおもっていた女の子でしたが、せいいっぱいのねがいがまだありました。

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