越智敦子 絵本と童話集 おはなし100こ

さいしょでさいごの3

そこへちょうど、かすみちゃんのお母さんがやってきた。
「そうた、お母さんのことおぼえてる?」
せっかく浮かんできたばかりで、ふいうちのパンチをくらった。
友達になった人全員から、一度はかならず聞かれるのが
「そうたんち、お母さんいないの?」
だ。
 「いないよ。よくわかんないけど。」
ほんとにそうで、よくわからない。父さんとは男と男の固いきずなで結ばれていたけど、そこのとこだけはさわっちゃいけない領域だった。
「おぼえてないよ」
うそじゃない。本当に何にもおぼえてないんだ。いろいろおぼえていたら、それはそれで大変だったと思うけど、どんなふうにいなくなっちゃったのか、はじめからいなかったとか、そんなふうに聞いていたのかな。だけどどうやらそうではないようだ。

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