越智敦子 絵本と童話集 おはなし100こ

さいしょでさいごの12

「ぼくそろそろ帰るよ。八百屋のおじさんおばさんも心配するからさ」

ぼくは、自転車置き場までぽつぽつと歩いた。
あんまり「とじこもって」歩いていたから、お母さんが追いかけてきたのも気づかなかった。
ふいに
「そうちゃんは重かったのよ。お母さんの子どもの中で一番ね。いっぱいおっぱい飲んで、いっぱい泣いて。やっと歩けるころ、よくここにきて遊んだでしょう。おべんと持って。おぼえてないかなあ。あの水飲み場でころんで、ほらこの傷」
ぼくのおでこの小さな傷は、お母さんといっしょのときだったんだ。ちょっとあって、お母さんがぽつりいう。
「そうちゃん、お母さんのところで暮らさない?」

 

急にぜーんぶがふにゃふにゃとくずれてしまう気がした。

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