ありがとうがききたくて9
故障で暴走する列車にじぶんのいのちをなげだして、じぶんが列車にひかれることで列車を止めて、多くの乗客を救った若者の話を聞いたことがありましたが、そんな場面に出くわすこともなく日々はしずかにすぎていきました。
生活に困っている人のかいもの袋にそっとおいしいできたてのパンをいれておく。つかれている人の気づく方向に心がなごむような花を咲かせておく。両親に結婚を反対されているカップルの善行をわかりやすい形で周囲に広める。さみしがり屋の老人のうぬぼれ話や、人生がうまくいかない若者のじまん話をしずかに聞く。
こっそりのありがとうはこっそりだからくわしくはお話しできませんが、だれでもが想像するようなものでもありますし、想像をこえるものでもありました。
そしてちかごろでは、おじいさんになったジップは、駅の待合でこっくりこっくりいねむりすることも多くなりました。

