ありがとうがききたくて10
ジップはかんがえます。神さまとおもえるおとこのひとがいった「おまえのその尊い行為が『ありがとう』だけですまされたのでは
かなわない」のことばはいったいなんだったのかと。では、じぶんがこうして生きてきたのは、なんのためだったのかと。
そのとき、駅舎の上を、美しく高い声で小鳥がさえずりながらとんでいきました。澄んだ青空は限りなく続き、すがすがしい空気が部屋中にながれこんできます。さきほど駅舎の前の木からもいだばかりの小さなレモンを手に取ってかじると、きりりと,lk_冷たい果汁が頬に飛び散り、酸っぱさが口からからだの中に広がります。
ジップはようやく答えを得たようにほほえんで小さくつぶやくのでした。
「ありがとう」
と。

